中国・香港・台湾の政治

なぜ香港デモはまだ続いているの!?どうして暴動化しているの!?今さら聞けない香港事情をできるだけ分かりやすく解説してみた

こんにちは。
2019年6月9日に香港で人口の7分の1に相当する100万人による
大規模なデモがあった事をご存じでしょうか?
次の週には200万人という大規模なデモ行進がありました。

2019年6月9日 香港の様子(写真:アメリカ連絡通信)

2019年8月14日現在、デモは香港国際空港全便欠航になるまで影響を及ぼしています。
しかし多くの日本人は香港の歴史背景や情勢を知らず、「デモで海外にまで迷惑をかけちゃダメ」「せっかくの香港旅行が…」と、対岸の火事のように傍観しているという悲しい現実が…

…という事で台湾大好きで香港に鈍感だった私が
勉強したての香港の情勢を分かりやすく解説しましょう。
(勉強したてですので、少々間違いがあるかもしれません)

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・香港って結局は中国なの?(下に続く)
・今回のデモの発端は何?
・デモ隊は暴徒じゃないの?
・どうして温和だったデモが急に過激化したの?
・『完全撤回』したのにどうしてデモが終わらないの?
・香港の人達からのメッセージ
・まとめ

普段は『香港』と私達は呼んでいますが、正式名称は

中華人民共和国香港特別行政区

とても長い名前なのです。
…ん?
頭に中華人民共和国ってあるけど?
やっぱ中国じゃん!?
いえいえ、香港には複雑な内情があるのです。
ではまずは歴史から簡単に見てみましょう

香港は1997年までイギリス領だった

1842年 香港島 イギリスに永久譲渡される
南京条約で香港島はイギリスに永久譲渡されイギリス領に。
公用語は英語、日常生活では広東語が使われていました。

1898年 香港島周辺の島を中国から借用する
99年の期限でイギリスは香港島周辺を中国から借り、統治を開始。

1997年 全ての島を中国へ返還
イギリスは永久譲渡の香港島以外の島を返還するつもりでしたが、
『返さないのなら武力行使すらいとわない』と中国はイギリスを脅します。
イギリスは香港人を案じ、『50年間は今のイギリス統治状態の香港を維持する事(1国2制度)を約束するなら返そう』と条件をつけてすべての島を返還しました。
これが香港の中国返還です。
香港人はイギリスと香港2つのパスポートを現在も持っているのです。
強引な香港返還に多くの香港の知識人や企業が国外に逃げ、お金のない人や期待を持った人達は香港に残りました。

次々と約束を破る中国

経済の要だった香港を中国は大事にしました。
しかしある事がきっかけで態度が急変するのです…

2007年
中国の人民元と香港ドルの通貨価値が逆転

つまり軍事的にも経済的にも香港より上となった中国。
中国にとって香港は利用価値のない場所になった訳なのです。
ここから徐々に香港政府に変化が起こります。

  • 香港政府内から民主派を排除
  • 中国への忠誠を拒んだ民主派議員の議員資格を剥奪
  • 中国政府を非難する本を出版していた書店や会社の関係者が中国に連行

2014年に発生した雨傘運動

一国二制度の約束を守らずに香港から民主と自由を排除する中国政府。
2014年に中国政府が2017年以降の行政長官(日本でいう総理大臣)選挙の立候補条件を親中派(中国寄り)にする事を決定し、香港の若者達が猛反対します。
それが2014年に起こった大規模デモ『雨傘運動』です。
しかし彼らは暴動など起こさずただ黄色の傘をさすことで平和的に反対の意思を示しました。

『普通選挙を求める』という横断幕を掲げるデモ隊
(写真:AAP通信)

学生は世界にも訴えかけ、大規模なデモだと世界各国は報道しました。

香港で中国の法律が適用される!?

雨傘運動であまり大きな成果を得られなかった若者たちは苦汁の日々を送ります。
そこに香港政府による衝撃の改正案が成立しようとします。

逃亡犯条例

犯罪者の中国への引き渡しが可能になる条例です。
これの何が問題になるのか…
香港で犯罪にならず、中国で犯罪になる事…

・民主化を働きかける事
・中国共産党を非難する事
・中国政府にとって不利な事を周知する事
・中国政府の内情を知り逃亡する事

これらが香港でも適用され、中国に連行される可能性があるというのです。

例えば中国人が日本で中国政府の悪口を言っても捕まりませんよね?
それは日本では犯罪にならず、言論の自由があるからです。
ただ窃盗など犯罪になると中国へ強制送還される可能性もあります。
もし日本で『逃亡犯条例』が可決されてしまうと、中国人が日本で中国の悪口を言った場合に犯罪が適用され、中国へ引き渡さなければならなくなります。
もしそこから発展して対象を日本に住んでいる全ての人に変更されたら?
私達も中国政府に言動を監視される生活を強いられます。
…こればかりはさすがに譲歩できませんよね。

そんな条例の第1歩が香港で…
しかも国民の意思をを無視して政府の独断で改訂されようとしているのです。
そしてこの条例に反対する人達が集結し、人口の7分の1にものぼる100万人規模の大規模なデモに発展したのです。

プラカードを掲げる女性(写真:AP通信)

彼らがデモで掲げる『反送中』。
直訳的にすると『中国へ送るの反対』
…つまり改正案への反対の意思表示なのです。

警察による制圧

さて、世界各国のメディアが雨傘運動に比べてこのデモに注目を集めた大きな理由が…

香港警察による催涙弾投下

催涙ガスに包まれるデモ隊 (写真:中央社)

デモ隊だけでなく、救護にあたっていた人、武力行使をやめるよう説得した親、取材していた外国人記者など無抵抗な国民に向けてゴム弾や催涙弾で攻撃をしたのです。
警官に広東語(香港の言葉)が全く通じなかったことから、警察の中身が中華人民解放軍(中国軍)とすり替わっていたのではないかという話もあります。
ゴム弾に馴染みのない日本人は子供のおもちゃのようなものを想像される方が多いですが、実物の弾をゴムに変えただけなので、かなりの威力があります。
近距離で当たり所が悪ければ、最悪命を落とす危険性も…
(後にプラスチック弾だったとも報道されています)

発砲する警察官(写真:ロイター通信)

トップが謝罪したが、デモはまだ終わらない

警察の催涙弾騒動の時
「デモ隊は暴徒だ。警察の催涙弾使用は正当防衛だ」
とデモ隊を批判した香港のトップ、林鄭月娥特首。
しかし超大規模なデモによって世界から非難の的となった彼女は
『改正案の審議を中断する。事実上の【廃案】とする。心から謝罪をする』
と会見を世界に向けて発信しました。

林鄭月娥特首 (写真:中央社)

しかしよく見てください。
事実上の廃案】であって【撤回】ではないのです。
トップの一声でいつでも復活させられる状態なのです。
2014年の雨傘運動の時に香港政府は同じ手口で、ほとぼりが冷めた頃に強引に法案を可決した過去があります。
謝罪もしていますが、改正案についての謝罪だけであって、
【デモ隊は暴徒、警察は正当防衛】と発言した事については触れていないのです。
『デモ隊は暴徒で警察は適切な対応だった』
『改正案の撤回はしない』
これが香港政府の極論なのです。
結局は根本的には何の解決にもなってない事が分かるでしょうか?
『もう雨傘と同じ手には騙されない!撤回表明しろ!』と香港の人たちは怒ります。

立法会を占拠したデモ隊

もし口論をしていてあなたが突然叩かれたとします。
あなたは手を上げずに話し合おうと努力しても
「おまえが先に叩いた」だのと相手から一方的に叩かれ続けたらどうしますか?
ふざけるなと怒って叩き返しませんか?
何もしてないのに暴徒と言われ、催涙弾を撃たれ、彼らもとうとう怒りました。

写真:共同通信

立法会(日本でいう国会議事堂)に強行突入をした若者たちが立法会を占拠し、
イギリス領時代の国旗を掲げ、立法会の中から切実な思い、願いを世界に訴えたのです。
この際にも若者たちは建物を壊しただけで警察官に危害を加えませんでした。
そこに警察官達が現れ、出て行かないと武力行使もいとわないと若者たちを脅します。
一触即発の状態でしたが、仲間からの必死の説得もあり、若者達は占拠を解除しました。
その後、毎週週末にはデモが行われるようになりました。
デモは若者だけでなく高齢層も参加するようになり、団結の輪が広がりつつありました。
しかし7月21日、デモ参加後の若者達に衝撃の事件が起こります…

白Tシャツ集団による無差別襲撃

写真:ロイター

中国との国境付近の駅にて、突如白Tシャツ集団が襲い掛かってきたのです。
ターゲットは多くのデモ参加者が来ている黒いTシャツを着た人。
写真から見ても分かる通り、一人に対して大勢で襲い掛かっています。
地下鉄車内まで追いかけて来た覆面集団に車内では阿鼻叫喚でした。
この覆面集団の正体は謎で、親中(中国寄り)の議員と握手をしていたという話から、親中派が送り込んだのでは…私服の恰好をした香港警察ではないか…という憶測が飛び交っています。
覆面集団はデモの参加不参加に関わらず、黒い服を着た人を見つけては無差別で襲撃しているのです。

白Tシャツ集団を取り締まらない香港警察

香港の人達をさらに怒らせた原因は、最初の襲撃時に警察が全く動いてくれなかった事、覆面集団を放置、黙認する政府の対応です。
目的のあるデモは徹底排除、無差別襲撃をする覆面集団は黙認…
これは誰が見てもおかしい事ですよね?
これにとうとう企業も動きました。

航空会社のストライキ、地下鉄運行の妨害

2019年8月5日から香港国際空港では大規模なストライキが決行されました。
そして若者達は中国と直結している地下鉄の扉を押えて運行を妨害したのです。
運行妨害には香港内でも賛否両論ですが、
平和的に【完全撤回】を求めても政府は動いてくれないのです…
これは彼らなりに必死にあがいている姿だと私は感じました。
そしてデモ隊の動きは世界中が報道せざるを得ない事態になります。

運行の妨害をする若者と説得する周囲の利用者(写真:ロイター)

香港国際空港が全便欠航、その理由

日本でも報道せざるを得ない状況になりました。
香港国際空港で大量のデモ隊が座り込みをした事による全便欠航です。
これで香港デモがまだ継続していた事を知った方もいるのではないでしょうか。
思いやりのある温和な香港のデモ隊が世界の人々に迷惑をかける行動に出る事は本当に珍しい事です。
彼らがそうせざるを得ない…許せない何かがあったと思ってください。
その何かとは…
写真も映像もあるのですが今回はあまりにも内容がショッキングなので…
台湾在住の香港人イラストレーター『爵爵&貓叔』さんの絵で解説しましょう。

2019年8月11日 香港で何が起こったの?

1.女性が右目を潰される

警察の放ったビーンバッグ弾が女性のゴーグルを直撃…貫通…
結果、彼女の右目の眼球は破裂し、完全に失明しました。

いきなりビーンバッグ弾って何?
軍事ヲタクでない限りそんな名前聞いた事ないですよね?
もちろん私も知りません。…そこで調べました。
【ビーンバッグ弾】
対象が本人や周囲の人にとって危険であるが、直接の脅威ではなく、これに対して致命的な力を使うべきではない場合に使用される
(出典:ウィキペディア)
この弾は体を貫通しませんが、胸に命中すればろっ骨を粉砕するほどの威力がある弾です。
そして本来は足に撃って無力化させる弾なのです。
それを無抵抗な女性の…しかも顔に撃つなんて言語道断です。
ニュースで映るデモ隊のプラカードをよく見てください。

プラカードを持つ女性(写真:Sam Tsang)

多くのプラカードには目の絵と『目を撃たないで』という言葉が書かれています。
彼らが何に不満なのか…もうみなさんは分かりますよね?

2.警察による不必要な取り押さえ、暴行

頭を赤く染めた男性が取り押さえられていますね。
実は彼、ただデモに参加しただけの人で、捕まるとすぐに
「わかった!何もしないから!ごめんなさい!ごめんなさい!」
と叫び、抵抗をやめて投降しましたが、取り押さえという名の暴行は収まらず、
結局彼は前歯を折られ、床は真っ赤に染まりました。

3.警察から暴徒の濡れ衣を着せられる

デモへ向かう男性を捕まえ、武装しているなどといちゃもんを付けて、身動きができなくなった時に後ろから警察官がこっそり彼のリュックに竹やりを入れたのです。
彼を暴徒として逮捕する為の偽装工作は、監視カメラによって発見されましたが、警察官がする事でしょうか?

4.警察がデモに紛れ込んで暴徒を演出

立法会の占拠でも分かったと思いますが、彼らはあくまでも平和的解決を強く思っています。
そんな彼らにやきもきした政府と警察は暴行の正当性を主張しようとデモ隊に扮してわざと暴徒化しました。
何故それがわかったのか…スパイが警察と協力して取り押さえたからです。
これは中国政府がよく使う方法で、暴徒のスパイは取り押さえず、周囲の何もしてないデモ隊を取り押さえるのです。

5.エスカレーターから蹴り落とす

これはもうそのままです。
『エスカレーターでは危ないですから遊ばないようにしましょう』
あのアナウンスが流れているあのエスカレーターです。
模範になるべき警察が人を蹴り落としちゃってますからね。
しかもその後に追いかけてさらに暴行を加えています。

6.ゴム弾を至近距離で発射

はい、ここでいきなり復習問題です。
ゴム弾はどのような状況で発砲すると命にかかわるでしょうか?
…そう、至近距離で当たり所が悪ければ命にかかわります。
それを1mという超至近距離で発砲したのです。

7.地下鉄の改札で催涙弾を発射

みなさんはメトロだとか地下鉄を日常で使いますよね?
ある日突然、警察が改札で催涙弾を発砲したらどうしますか?
どうやって地上へ逃げますか?
もう警察にとってデモ隊も一般市民も関係ないのです。

信じられないでしょうが、これら7つの事がたった1日で起こったのです。

激化する香港警察による暴挙

警察による暴力や理不尽な拘束にもめげずにデモは毎週続けられました。
そして20日後の8月31日、またもや警察による大きな問題が発生します。

1.デモを許可しない政府

デモは市民の声を伝える手段です。
通常は申請すれば許可が下りますし、今までずっと許可をしてきました。
それを許可しないという事はつまり、市民の声を聞かずに、無理やりデモをやめさせようとする横暴な対応なのです。
しかし市民たちは政府からの弾圧に負けず、ネットを使って街に集結しました。
そこでまたもや警察からの横暴な行為を受ける事になります。

2.蛍光塗料を無差別に放水

写真:AP通信

もし通学路、通勤路で突然服を真っ青に汚されて、塗料がデモ参加の証拠だと言われ、拘束されたらどうしますか?
たまったもんじゃないですよね?
邪魔なデモ隊を一斉に拘束したい警察は放水をする事で目印を付け、容易に参加者を拘束しようとしたのです。
この水はそのまま川へ流れ、酷い環境汚染になりました。

3.デモ隊のフリをしてデモ隊の暴徒を演出

日本でもガソリン弾を投げている暴徒化したデモ参加者の映像が流れました。
しかし彼の腰には警察しか持つことが許されない物が映っています。
そう、彼はデモ隊のフリをした警察官なのです。
この他にも、火炎瓶を投げたデモ参加者が警察官と『良くやった』と言いたげに肩をたたき合っている様子も映されました。
これもデモを暴徒と世界に認めさせようとする作戦なのです。
警察がこうしなければいけないという事は…
本当のデモ隊がどれほど平和的にデモを行っているか分かりますよね?

4.地下鉄の車両内で老若男女問わず無差別攻撃

地下鉄太子駅に突然警察が大量に走っていきます。
すると突然デモ参加者らしき人達を拘束し、突然車内の人を棒で攻撃しています。
攻撃を受けている人たちは警察に何もしてないですよね?
ただ乗っているだけの無関係の人も攻撃の被害を受けました。
ん?なんだか見た事がある光景…
そう、行動が白Tシャツ集団と全く同じなのです。
この攻撃で、大人だけでなく無関係な子どもまでけがをしました。

5.救護に駆け付けた人達を締め出す

太子駅での襲撃を聞きつけて仲間が救護に駆け付けました。
しかしシャッターが下ろされ、締め出してしまったのです。
『私達は武器を持っていない!』『中の人達を助けたいだけなんだ!』
彼らは何時間も呼び掛けましたが、対応してくれず泣き崩れてしまいます。
最終的に入る事が出来ましたが、1人ずつ壁に向かって並ばされ、手荷物検査をされたのです。

6.警察へやめるよう訴えかけた外国人を逮捕

ある一人の外国人がカメラに訴えかけていました。
『私は24年間香港に住んでいる!』
『香港は変わってしまった!今香港には自由がない!』
『北京政府は香港から自由を奪っている!』
『一国二制度なんて嘘っぱちだ!』
デモ参加者を拘束するために走る警察官たちを見た彼は『一体彼らが何をしたというんだ!』と言い寄り、自分の意見をぶつけます。
見限った彼が行こうとすると警察はそれを止め、彼を押し倒して逮捕してしまいました。

7.警察上層部がこれらを全て正当化

これらの行動は瞬く間にSNSで広がり、警察上層部は会見を開きました。
『これらは法に基づく正当な行動であり、問題はない』
『デモ隊は市民のフリをして、警察の行動のあげ足をとろうとしている』と主張したのです。
実際に映されていたのは警察の皮を被った暴徒だったのですが…

9月に入り、ようやくトップが行動を起こします。

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