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最近のアニメが綺麗な理由は○○だから!?アナログ→デジタルのアニメ史を解説

社会現象まで起こしている『鬼滅の刃』。
ファンの間でアニメの話をすると必ずと言っていい程

作画がきれいすぎる

という言葉を耳にする。それはなぜかご存じだろうか?

CGを感じさせない技術力

私は幼少から現在までアニメを軽い程度知っている…いわゆる【ゆるヲタ】に分類されているが、体調不良で10年ほどアニメからは遠ざかっていた。
そんな私を再びアニメに呼び戻した作品が『鬼滅の刃』である。
10年ものブランクが開いたからこそ、初めてこの作品を見た瞬間、作画の綺麗さと同時に

今までのアニメとは違う風景・演出が多い

という別の違和感を覚えた。
まずは1話目の始まりを見てみよう。

出典:DVD『鬼滅の刃』第1巻

雪山で炭治郎が禰豆子を背負い歩く場面。
サラッと見てしまえば何ともないが、雪の表面の絶妙な凹凸がCGで作られており、人物や木は手描きアニメ(以下略:アニメ)なのである。
そして画面全体の絶妙な明暗によって場面の気候なども視聴者に伝わってくるという高度な技術も詰まっている。
さらに戦闘場面では部分的ではあるが人物もCGで描かれている。
今はここまでCG要素を違和感なく混ぜられるようになったのかと驚かされてしまった。

セル画(白黒・カラー)→デジタル化→CGの導入→CGとアニメの融合

このように考えると違和感なくCGとアニメの融合ができているこの作品は日本アニメの第4世代といえよう。

そもそもセル画アニメって何?
デジタル化した経緯は?

1990年後半から2000年代半ばにかけアニメのデジタル化が進み始めた為、2000年以降に生まれた人にセル画という言葉はあまり馴染みがないだろう。
セル画アニメとは下の写真のようにセルと呼ばれるシートに1場面ずつ描かれ作られているアニメーションの事であり、セルアニメとも呼ばれる。

セル画には『セル絵の具』という特殊な絵の具が使われているが、1990年代に絵の具に必要な材料を扱うメーカーが次々と製造を終了。
その影響からセル絵の具を製造できなくなり、セル絵の具が高騰した。
これによりアニメ業界はコスト削減の為にも急いでデジタル化移行をしなければならなくなったのである。(諸説あり)
最後のセル画アニメは有名なジブリ作品では『もののけ姫』、テレビ放映では『サザエさん』であり、2013年10月に『サザエさん』がデジタル化した事により、すべてのアニメ作品がデジタル移行され、セル画技術は将来的にロストテクノロジー(失われた技術)になるとも言われている。
このような経緯から2000年代初頭はアニメ第2世代の始まりであるといえよう。

セル画時代は光の演出にCGを使う事はあったが、本格的なCGとの融合はされていなかった。
そんな時代に初めて立体的なCGを導入した作品をご存じだろうか?

初めて本編にCGが導入されたのはいつ?

日本で最初に本格的なCGが本編へ導入されたのは1998年放送の『ロストユニバース』である。

出典:youtube

当時はセル画からデジタル化への移行活動が行われていた頃であるが、この作品はまだセル画である。
この作品まではOPやEDに部分的にCGを使う作品はあってもCGの違和感から本編に使われる事はなかった。
動画からも分かる通り1998年当時のCG技術(プレイステーション、64の時代)では違和感なくセル画とアニメーションとの融合ができない為、この作品では宇宙での戦闘シーンはCG、その他はアニメ、という風にCGとアニメは完全に区切られて作られていた。

初期のデジタルアニメは酷かった

第2世代初期の作品はデジタルといっても現在のようなきめ細やかな画質ではなかった為、演出上ズームになるとデジタル特有のカクカクとした荒い線になり、線や色彩もよりくっきりとした事で『温かみがない』という批判もあった。
『セル画ではないのならアニメ化しないでくれ』と自作品のデジタルアニメ化を拒否する大御所の漫画家がいた程であった。
個人的には2000年代半ばから後半にかけて徐々にこの違和感は改善されたように感じる。

初めてCGとアニメの融合に成功した作品

デジタル化が始まると同時にアニメ業界は新たな境地に挑む。登場人物のCG化である。
実はデジタル化移行の最中である、2001年に放映された『星のカービィ』ではすでにキャラクターがCG化され、アニメとの融合も行われている。
つまりデジタル化という第2世代は登場人物のCG化という第3世代の始まりであり、CGとアニメの融合という第4世代への挑戦の始まりでもある。

出典:youtube

ただ星のカービィと漫画の登場人物では立体CGの精密度が大きく異なる上に、見ても分かる通りアニメとの融合にはただ違和感しか感じない。
しかし当時としてはこの作品は様々な意味で画期的であり、今でも多くのファンに愛されている。
この後も様々な作品でアニメとCGの融合作品が生み出されるものの、グラフィックや動きなどに違和感を感じる物が多かった。
そんな中、グラフィックも動きも違和感なくCG化し、アニメとの融合に成功した作品が誕生する。
2014年に放映された『シドニアの騎士』である。

出典:youtube

この作品は独創的な世界観からアニメ化は無理だといわれていたが、CGにより世界観はもちろんの事、ロボットの細かなキズなども忠実に再現し、原作ファンも引き込んだ作品だ。
完全CG作品のように思われがちの作品であるが、アニメ感を出す為に一部背景に手書きを採用している。
背景以外はCGだが、完全CG作品と思わせるほどに違和感を感じさせないこの作品はアニメとCGの融合に成功した最初のアニメ作品…第4世代といえる。
先ほどのカービィと比べても13年の歳月によるCG技術の進歩は一目瞭然である。

『鬼滅の刃』での新たな挑戦

アニメ『鬼滅の刃』を鑑賞して他作品とは違う何かに気が付いた方もいるのではないだろうか。
『シドニアの騎士』はCG要素が強いのに対して『鬼滅の刃』はアニメ要素が強い。
しかし『鬼滅の刃』の中にも『シドニアの騎士』と同じようなCG的要素も多く含まれている。
アニメとCGとの境界線を感じさせない技術とは何なのか…まずはある場面を見てもらおう。

出典:DVD『鬼滅の刃』

これは鼓(つづみ)を叩くことで特殊能力を使う鬼との戦闘シーンである。
部屋が回転する際にCGが使われている事は分かるが、他では違和感をあまり感じさせない。
しかし元来のアニメ風に違和感を強めた結果がこれだ。

出典:DVD『鬼滅の刃』

こうすると場面全ての背景にCGが使われている事が分かる。
全体を薄暗くしたり、色彩を変調させる事によってアニメとCGとの境界線を見え辛くしているのである。
作品全体を青っぽくして融合への違和感をなくしている作品もあるが、鬼滅の刃は場面の照明や気候によって色や明暗を使い分けている。
現代の最先端CGアニメ技術の集大成ではないかと感じるほどである。

まとめ

デジタル化移行の頃でも『絵が綺麗』と言われていたが、今見てみるとどうしてそのように思っていたのだろうと感じてしまう。
きっと10年後にはさらに発展したアニメ作品が誕生するのであろう。
第5世代はどのようなアニメ作品になるのかが楽しみである。

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